『ゆっくり達のジャズエイジクトゥルフ』感想

ゆっくり達のジャズエイジクトゥルフ オススメ度:5

2012年10月から、いや、前作『ゆっくり達のクトゥルフの呼び声』開始の2011年3月から数えれば3年弱も続いた、探索者たちの冒険の終わりがついにやってきた。クトゥルフ神話 TRPG 動画の流行の発端とも言える本作。はじめから終わりまで、まさに万人におすすめできる作品となっている。プレイヤーは前作から引き続きなので、ぜひ前作から続けて視聴することを勧めたい。

冒険の舞台はかの有名なアーカム。探偵社の一員である探索者たちは、舞い込んできた怪しげな依頼に翻弄され、神話都市アーカムの暗部へと足を踏み入れることになる……。

ゆかいなキャラクターたち

このシリーズの特色は、なんといっても登場人物のキャラクターの痛快さである。ゆっくり霊夢魔理沙・文にやる夫・やらない夫を加えたメンバーが、ときに面白おかしく、ときにシリアスにゲームをプレイする様子は、見ているだけでこちらまで楽しくなってくる。特に、キャラクター相互のかけあいが活き活きと描写されており、「TRPG を楽しくプレイするとはどういうことか」がキャラクターを通じて語られているかのようである。

また、他の動画では見られない点として、キャラクターのイラストに AA を使用しているという点が挙げられる。これによって、既存の膨大な AA バンクを利用することができ、キャラクターの表情の豊かさが演出されているのだと感じた。

(もっとも、作者はそうは考えていない ようである。たしかに、最近は利用可能な立ち絵の種類が多くなってきて、そちらを使ったほうが統一感を得られるのかもしれない。この動画で AA が使用されている理由のひとつには、製作が始まった2011年当時はまだ動画用として公開されている立ち絵の種類があまり多くなかった、という事情があるのかもしれない。)

軽妙な展開

キャラクターたちと並んで秀逸なのはストーリー展開である。1話毎に盛り上がりがあり、笑いがあり、緊張があり……という、深く練られた物語は全編を通して私たちを飽きさせない。

とくに今作、テレジアさんが怪しげな男と心理戦を繰り広げるところなどは、見ているだけで手に汗握るあざやかな展開であった(もっとも、おまけ動画で発言されているように、このような展開は現実の TRPG からかけ離れているという意味で作者の好むところではないようだ)。

シナリオ

本作品のシナリオは製作者のオリジナルであり、先日開催されたコミックマーケット85で頒布された『インスマスの系譜』に掲載されている。作者の Twitter を参照すると、10時半ごろには完売していたようで、12時過ぎにのうのうと会場入りした私は手に入れることができなかった……(ちなみに開場は10時、ということは始発でいかないとほぼ無理だったということじゃないか!)。後日通販があるようなので、期待して待とうと思う。このオリジナルサプリは、体裁も「それっぽい」ので、ぜひ手に入れたい逸品である。

内容は、シティシナリオらしく、目的とヒントが提示されて、それにしたがって行き先を選びイベントをこなしていくというもの。非常に見通しがスッキリとしていて、楽しんでプレイするのに適したシナリオのように感じた。ぜひ自分でもプレイしてみたい。

みんなも TRPG をやろう!

作者が動画を通じて一貫して伝えていること、それは「TRPG はこんなにも面白い!」ということであって、「みんなも TRPG をやろう!」ということである。 それに呼応して、作者の Twitter では、動画の製作に関してだけでなく、オンラインセッションの開催やクトゥルフコンベンションについてなど、さまざまな「クトゥルフ神話 TRPG をプレイする」ことに関する情報が発信されている(私もオンラインセッションに参加させていただきました。その節はありがとうございました m(_ _)m)。

今作のおまけ動画にあるように、TRPG はプレイしてこそ、その真の面白さを知ることができるものだ。作者が望んでいるように、私も、みなさんがこのブログを通じて TRPG に興味を持ち、オンライン・オフラインを問わずプレイして、それが新しい面白さの開拓につながり、ひいては TRPG プレイ人口の増加にも寄与することを願っている。

……しかし、とりあえずいまは堅苦しいことは抜きにして、本作を楽しみ、その完結を祝おうではないか! 初心者から上級者まで、文句なしで最高評価でオススメできる作品である。