『古明地こいしの箱庭クトゥルフ』感想

古明地こいしの箱庭クトゥルフ オススメ度:5

クトゥルフ神話 TRPG を紹介しようと思ったら、何をおいてもまずは『古明地こいしの箱庭クトゥルフ』を紹介しなくてはなるまい。この作品は既存のクトゥルフ神話 TRPG 動画のなかで、もっとも「クトゥルフらしい」作品であると言ってよいだろう。登場人物にも、プレイヤーにも、動画の視聴者にさえも何が起こっているのかわからない恐ろしさ。それを絶妙に表現しきった一作である。

FUD

この動画の特徴のひとつに、クトゥルフ神話が持つ言いようのない恐怖を、独自の値「FUD」を用いて演出している点がある。この値が何を意味するのかは作中で明かされるのでここでは書かないが、素晴らしい独自要素だと思う。

正直、この値の上昇によるペナルティが作中に効果的に用いられているかどうかは微妙なところだ。たとえば魔理沙は途中で …… になっているみたいだが、それに伴う能力値減少が行動にあまり影響を与えていなかった気がする。しかしたとえ実際に行動に影響が無かったとしても、キャラクターの行動を制限する可能性を示唆することでプレイヤーに恐怖を与える、という機能をこの値は果たしている。そしてその「忍び寄る恐怖」が、この作品独自の雰囲気を醸成している。

メモ

「忍び寄る恐怖」を表現するもうひとつの要素として、この動画ではキーパーからプレイヤーに与えられる情報が全員に伝達されるわけではないという点がある。この方針によって、この動画以降ほかの動画でもたびたび引用されることになる「メモを渡す」描写が生まれることになる。メモの内容は視聴者にすら公開されないこともあり、これも、誰も全体像を把握することができない「忍び寄る恐怖」の演出に一役買っている。

ストーリー

ストーリーも至高。泣き所もあり、サスペンスもあり、アクションもある。最終的には(クトゥルフ神話基準で)綺麗に終わるストーリーになっていることもあり、ある意味で安心して見られる作品である。

しかし……最も重要なプレイヤーキャラクターであった鈴が、まさかあんなことになってしまうなんて…………! あれさえなければさらにストーリーが深まったかと思うと悔やんでも悔やみきれない。まぁ仕方のないことではあるのだが。

総括

長いストーリー・テキスト読み上げなし・演出の陰鬱さゆえ、初心者に手放しでオススメできる作品とは言いがたい。しかし、この作品の前に1作か2作クトゥルフ動画を試聴するか、ラヴクラフトによる原作を数作読むかしていれば、精巧な仕組みの上に構築された名状しがたいクトゥルフ・ワールドを存分に楽しむことができるだろう。時間をみつけて、是非ご視聴いただきたい。

クトゥルフ動画感想まとめ

P.S. あと、まぁ、こいしちゃんがかわいい。超かわいい。なめたい。はぁ……。